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司法書士法教育ネットワーク教材検討会の「法教育」に対する考え方

関連項目 右矢印画像 法教育としての消費者教育
関連項目 右矢印画像 消費者教育の推進に関する法律 関連情報

 法教育とは、法律専門家を養成する法学教育とは別に、一般の市民にとって必要な基礎的な法的リテラシーを養成する教育です。(法的リテラシーとは、法、司法制度、法形成過程に関する基礎的知識・技能などの資質を身につけ、これを主体的に活用していく能力のことです。)
 では、一般市民にとって必要な「基礎的な法的リテラシー」とは、何なのでしょうか。
 法務省・法教育研究会の「報告書」によれば、それは、「法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付ける」ことだと指摘されています。
 しかし、教材検討会では、「理解し、考え方を身に付ける」だけでなく、もう一歩踏み込んで、それがたとえ小さなアクションであっても、自分にできる行動を何か起こせる力を身に付けること、行動によって法律が作られ、解釈され、変更されうるということを実感すること、そういったことにも踏み込んだ力を養成することを目指すべきではないかと考えてきました。
 そこで、教材検討会では、この法教育で養成すべき「基礎的な法的リテラシー」を、おかしいと思ったときに、法律や相談先を調べてみる、相談をしてみる、法律専門家や司法制度を利用するなど、自分にできるアクションを起こせる力、すなわち「法的な疑問・被害を感じたときに動ける力」であると整理しました。

 この「法的な疑問・被害を感じたときに動ける力」をイメージしていただき、これを養成できる法教育のあり方を考えてもらうヒントとして、下図のような考え方、行動の道すじを考えています。

 「法的な疑問・被害を解決するための思考・行動のフローチャート」図
 おかしいと思う、気づくためには、判断材料となる基礎・基本の法律や被害例等に関する知識が必要です。ですが、法律や被害例等をすべて知っているというようなことは無理な話です。そこで、物事を原則から考えるという法的なものの見方、考え方の基本を身につけることが重要になります。

 原則から考えておかしいなと気づいたとき、被害にあったとき、次に踏み出してほしいステップは「調べる」「相談をする」という行動です。そこでは、法的な問題を調べる方法、相談すべき専門家、司法制度を知ってもらうことが重要になります。
 同時に、「相談をする」ことにどのような意味があるのかを知り、相談できる力(スキル)も身につけられるような工夫も必要です。
 「相談」には、二つの意味があります。一つは、相談者個人の被害の回復、問題の解決への第一歩であり、もう一つは、同様の被害の再発防止等、社会の改善のための第一歩であるということです。
 後者の例をあげると、例えば、何かの問題で相談事例が集中すれば、弁護団や被害者の会が作られたり様々な運動が起こり、関係する法令を改正したり新しい法令がつくられることもあります。
 法律問題は専門家に任せたら何とかなるというスタンスではなく、主体性を持って相談をし、専門家に手伝ってもらったり司法制度を利用したりしながら、「自分で」解決を目指す第一歩が相談であることを理解し、その第一歩を踏み出す勇気を育てたい。たった一人の小さな疑問、そしてそれを感じた時に起こす相談という小さなアクションは、大きな力を発揮する可能性をもっているということを知らせることから、このような勇気と力を養成していきたいと考えています。
 例えば、何らかのトラブルに直面した当事者は、その問題解決のために、どのような思考をし、法や司法制度と向き合ったのか。これを具体的に見せる(伝える)のも、法教育の工夫の一つだと考えています。法律があっても解釈がわかれている問題であれば、司法の判断をあおぎ、その結果としての裁判例が判例法理を形成していくこともあります。使える法律が無いときは、必要ならば法律を変えたり作ったりする行動を起こすこともあります。
 このような考え方、行動の道すじを示し、実際に、この道すじにそって行動した当事者の例を見せる(伝える)のが専門家の役割、そして、その思考方法と行動力の定着を図るのが学校教育の役割であろうと考えています。

法教育としての消費者教育

右矢印画像日本司法書士会連合会、近畿司法書士会連合会、大阪教育大学の三者による下記の
共同研究(研究期間:2010年9月〜2013年3月31日)について、研究報告書が公開されました。
 平成25年3月4日 「法教育としての消費者教育に関する研究
 〜社会科(公民科)・家庭科の教材・授業案開発に向けて〜」研究報告書
  詳しくは、日本司法書士会連合会のホームページをご覧ください。

右矢印画像消費者教育とは、
(1) 消費者が商品・サービスの購入などを通して消費生活の目標・目的を達成するために必要な知識や態度(購入者としてのバイマンシップ=buymanship)を育てること、
そして、
(2) 消費者の権利と役割を自覚しながら、個人として、また社会の構成員として自己実現していく能力(市民ないし主権者としてのシティズンシップ=citizenship)を開発すること、
を目的とする教育です。
 消費者が消費財(物やサービス)を購入する際には、必要性・価格・品質・安全性・環境への影響などの情報を集めて商品を選択し、購入店や支払方法を検討するといった過程を経て売買契約を締結し、その売買契約に基づく責任(例:商品の受領と引換えの代金の支払いなど)を果たして権利の実現(例:商品の入手)をし、当該契約に何らかの問題があればこれを解決するための主張・行動をし、商品に問題があれば批判をするなど意見を発信し、企業や社会をよりよいものにするための行動をするといった一連の思考・行動を行っています。
 こうした一連の思考・行動を行う消費者を取り巻く問題には、法に関する問題が大きく関連しています。消費者の消費行動には、常に「契約」という法律行為が存在し、民法の適用が問題となります。消費者基本法、消費者契約法、製造物責任法など、消費者を守る多くの法律も存在します。消費者の生命・身体の安全が脅かされたり、悪質商法等による経済的な被害が引き起こされたりしている場合には、裁判を起こしたり、新たな制度や規制を求めて法律の改正・新設を求める消費者運動が行われたりすることもあります。
 したがって、前述のバイマンシップの養成には、例えば「契約」あるいは民法の基礎・基本となる法の原則などを学ぶ法教育を、シティズンシップの開発には、法に関わる分野での消費者としての行動、司法制度や法形成過程などを学ぶ法教育を、消費者教育と同時に、あるいは関連させて行う必要があります。つまり、消費生活の場面で「法的な疑問・被害を感じたときに動ける力」を養成するための、「法教育としての消費者教育」の実践が求められているのです。

 ところで、「消費者市民社会」という考え方があります。
 「消費者市民社会」とは、消費を通じて能動的に社会参加する市民によって構成される社会、消費者が批判的精神をもち、主張し、行動し、社会参加する社会、などと定義される社会です。
この「消費者市民社会」を構成する「消費者市民」は、事業者にコントロールされる受動的存在としての消費者ではなく、倫理、社会、経済、環境などを考慮して消費行動を選択し、能動的に事業者や政府に対して働きかけを行う消費者です。このような「消費者市民」によって構成、運営される「消費者市民社会」では、消費者自身の権利も守られ、公正な事業活動が促進され、持続可能な社会発展が達成されると考えられています。
 そこで、この「消費者市民」を養成するための消費者教育として、シティズンシップの開発の視点が重視されています。
 これを法教育の立場から捉え直すと、消費者被害を無くす社会を作っていくために、法の分野からできることを考える学習が必要であると考えることもできます。「法教育としての消費者教育」は、「消費者市民としてのシティズンシップを育成する教育」としても重要な考え方ではないでしょうか。

消費者教育の推進に関する法律 関連情報

【司法書士法教育ネットワーク役員会声明】
『「消費者教育の推進に関する法律」の施行にあたって』(平成25年1月19日付)
を発表しました。 右矢印画像上記声明文は、こちらからご覧ください。

【「消費者教育の推進に関する法律」が、2012年12月13日に施行されました。】
消費者教育推進法に関する情報は、
消費者庁のホームページ (消費生活情報コーナー) に掲載されています。

「消費者教育の推進に関する法律」に関する「よくある質問と回答」も、
上記情報コーナーの同法の情報コーナーに掲載されています。http://www.caa.go.jp/information/pdf/121221QandA.pdf

【参考情報】
「消費者教育の推進に関する基本的な方針(基本方針)」が、2013年6月28日閣議決定されました。】
基本方針に関する情報は、消費者庁のこちらのコーナーに掲載されています

消費者教育の体系イメージマップ 
消費者教育のための体系的プログラム研究会、2013年1月22日報告より